考える葬儀屋さんのブログ 「お葬式のトラブルは葬儀屋だけが悪いのか?」 を読んで

考える葬儀屋さんのブログ 「お葬式のトラブルは葬儀屋だけが悪いのか?」にあえて反論してみたいと思います。

※あらかじめ「あえて」としているのは、ほとんどすべて賛同しているからです。
また、こちらは葬儀のプロではなく、また、消費者のプロ(?)でもありません。

また、この手のものは、総論と各論が入り混じってしまうので、不毛な議論になってしまうのがほとんどで、ですから、まぁ、その程度のわたしの“感想”だと思ってお読みください。

以下、太字は引用



「先日、父が亡くなった。
生前、故人が自分で葬儀社に相談し、
2カ月前に見積もりを取ったときは50万円であったが、
亡くなった日に改めて見積もりを取ったら96万円となっていた。
さらに葬儀業者から戒名を含めた僧侶への謝礼として40万円を別に払うように言われた。
高すぎて納得できない。」


という神奈川県の消費者生活センターのサイトの相談事例に関しての、考える葬儀屋さんの考察です。



葬儀屋サイドから見ると、
この情報だけでは葬儀屋が一方的に悪いとは断定できません。

そもそもこういう状況になるのは
①葬儀社の説明不足
②消費者の理解不足 (←これも突きつめれば葬儀社の責任とも言えますが)
が原因の可能性が高いです。


確かに考えられる原因は、1か2でしょう。
でも、そもそも、見積もりが50万なのに、倍になってしまうことに憤りを感じているのではないのでしょうか?
見積もりが50万で、実際に96万かかるということは、「その見積もりってなんだったの?」というのが、消費者の素直な感想でしょう。

見積もりが倍になってしまう見積もりならば、意味をなさないので、それなら初めから意味のある見積もりを出すべきでは?と思ってしまうのです。

意味のある見積もり、つまり、2~3パターンの見積もりを出してくれればいいのです。
なぜそうしないのか?そうしてくれなかったのか?

そこで考えられるのが、見積もりは安く見させて、お客さんを呼び込み、実際は高くなるという、まぁ、世の中によくある商売のパターンでしょう。
別にそれは葬儀に限ったことではないです。決して誇れる商売の仕方ではないでしょうが。

結婚式や住宅を買う際にも、見積もりは、こうだけど、いろいろ加えると、このくらいになりそう、というのはよくあると思います。
葬儀との違いは、その都度、変更がきくということです。

葬儀の場合は、慌ただしさもあり、変更がききづらいです。ですから、葬儀社に一任するしかない状況になりがちです。
そこへ見積もりの倍の料金を請求されると、これは心情的に「裏切られた感」があるのだと思います。
もちろん、葬儀屋が一方的に悪くはないですが、悪く思いたくなりますね。

次に考えられるのは、消費者の理解不足、というか葬儀屋サイドとの「葬儀」に関する考えの違いです。

これはわたしの持論なのですが、葬儀屋さんが考えている「葬儀」と消費者の考えている「葬儀」に違いがあるため、言っていることがかみ合わないのだと思います。

簡単にいうと、葬儀屋さんの考えている葬儀の料金とは→遺体の搬送や処置、通夜・告別式など葬儀屋さんに支払われるもの。

消費者の考えている葬儀の料金→上のほか、宗教者への支払い(戒名料や読経料)、通夜ふるまいや精進落とし、香典返しなどの返礼品など、すべてをひっくるめて葬儀なのです。

ですから、消費者が葬儀に200万かかったという場合と、葬儀屋さんが葬儀に200万は高い、という場合の「葬儀」は上のような感じなので、認識が違っていると思うのです。

そもそも、葬儀に関わる食事や返礼品、宗教者への布施は、いわば葬儀屋さんのらち外の変動費なので、それを見積もりに入れることは難しいと思います。

それを考慮に入れて見積もりを出せば、どう考えても100万円以下の見積もりは出せないと思います。
変動費の部分は読めないので、お布施などの平均額を入れたら、もうそれだけで+50万円でしょう。



③葬儀屋は悪いやつというバイアスを持つクレーマーの増加
っていうのがいま私が懸念していることです。
葬儀屋って悪い奴だから俺ら(消費者)を常にだまそうとしてるんだろ、
って考える人のことですね。


テレビや週刊誌で、その手の悪徳葬儀屋が頻繁に取り上げられているので、そうとう消費者もバイアスがかかっていますよね。
でも、実感としては、悪徳な葬儀屋さんはほとんどいないですけどね。
まぁ、犬が人を噛むのではなく、人が犬を噛まないとニュースにならないのと同じで、悪徳の葬儀屋さんを取り上げないと、ネタになりませんからね。

でも、不思議なのは、

「葬儀にかかる費用は、全国平均で200万円です。でも、うちの葬儀社ならば、こんなに安くできます!」

というホームページをよく見かけます。
というか、そんなのばかりです。

もちろん、ここ数年の葬儀にかけるお金の平均額が下落しているのは知っています。
しかし、各葬儀社さんの声高のうたい文句の割には、まだまだ高止まりしている気がするのです。
どの葬儀社も平均値よりも安い金額でやっているのならば、どんどん平均額が下がってもよさそうですが…。



仮にそこまでの悪意を持っていなくても
「通常、価格とサービスの質には相関関係があるのだから
最低価格の葬儀を選んだら最低のサービスが提供される可能性が高まる」
という理屈を理解していない人が
増えてきているのではないでしょうか?


これは本当にそう思います。
1年前にあった高速バスの事故がいい例ですね。
値段にはそれなりの理由があって、安いということはどこかで無理や無茶をしている可能性もあるということを少しは認識しないと危ないと思うんですよね、その思考の方法が。



そろそろトレードオフということを意識しないといけないのではないでしょうか。 


なかなか、葬儀業界でトレードオフというのも難しいと思いますが、もしそうなったらある種のイノベーションでしょうね。


『トレードオフ』 ケビン・メイニー


これは鈴木葬儀社の鈴木さんが以前おしゃっていたことなのですが、思い切って葬儀社も昼間のみとかの営業のところが出てくると、業界としても変わると思います。

24時間365日対応で、しかも低価格って、それは無理でしょ?(;^_^A
と、思いつつもやってのけようとする葬儀屋さん(例、あんしんサポートさん)がいるかぎり、「より安く、より丁寧な葬儀が出来るはず」というバイアスが消費者にかかり続けるのでしょうね。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんばんは。
考える葬儀屋さんこと、ハンドルネーム物理教師です。
丁重な感想ありがとうございます。
これから述べるのは想像の混じった(夢は作家の整体師様もおっしゃっているように)各論なので、まぁ葬儀社側のひいき目の議論だと思ってください。

>そもそも、葬儀に関わる食事や返礼品、宗教者への布施は、いわば葬儀屋さんのらち外の変動費なので、それを見積もりに入れることは難しいと思います。

葬儀屋さんによって異なりますが、私の勤める葬儀社は、お布施以外の要素(食事、返礼品、火葬料)も全て見積もりに入れています。なぜなら、消費者は総額を知りたがっているから、です。葬儀屋の支払いではないから除外、というのは葬儀屋の身勝手な論理だと思うので。一見他社よりも割高に見えてしまいますが、そこは「ていねいに説明する」という対応でカバーします。一度理解してもらえると、こちらの方が良心的だということが伝わります。

なので、私の勤める葬儀社の場合だと
故人の希望が密葬で50万円→遺族はやっぱり会葬者呼びたい→変動費込みで96万円
という事例はたまにあります。

その神奈川の葬儀社が上記の見積もり体系だったかどうかは疑問ですが。

>どの葬儀社も平均値よりも安い金額でやっているのならば、どんどん平均額が下がってもよさそうですが…。
原因はおそらく平均値が間違っているから、だと思います。よろしければ拙文を参照ください。http://funeralservice.livedoor.biz/archives/378879.html

今後ともおつきあいの程よろしくお願いいたします。

C さんのコメント...

考える葬儀屋さんこと物理教師さん

ご本人直々のコメントありがとうございます(*^o^*)